[編注:このテレカンファレンスは、3月10日金曜日、SVB閉鎖のニュースが発表されてからわずか数時間後に行われたものです]
3月10日、シリコンバレー銀行(SVB)が破綻し、米連邦規制当局の管理下に置かれることになりました。 資本の危機的状況の中、「昔ながら」の取り付け騒ぎとも言える事態の発生を受け、SVBは瞬く間に幕切れを迎え、48時間以内に完全に破綻してしまいました。 専門家の深い知見をできる限り早くGLGのクライアント企業様に届けるため、GLGのジャッキー・マーフィーは同日にテレカンファレンスを企画、主催しました。お話を伺ったのは、GLGアドバイザーであり、Gateway First Bank(ゲートウェイ・ファースト・バンク)の元会長兼CEOであるスティーブン・カリー氏です。 以下は、そのテレカンファレンスの抜粋です。
まずは、過去24時間に起こったこと、そして現在の状況についての説明から始めましょう。
規制当局は、早急に動かなければ事態がさらに悪化するという状況に直面していたと思います。 SVBに十分な資本または流動性があれば、このような行動は起こさなかったでしょう。 これは、貸借対照表(バランスシート)にかなりの穴があったということです。私たちはこれを確認できないので、定量化することは不可能です。 このような状況では、こうした預金が急激に増え、その量を処理するには時間がかかります。 私はこうした状況を自分の目で見たことも、経験したことも、それに関わったこともあります。 今回のことは、経営陣にとって驚きだったと確信しています。おそらく規制当局にとっても同様だったでしょう。 だからこそ、当局はこれほど早く行動したのだと思います。
このような事態は、業界全体に波及しないうちに食い止めることが重要です。 当局がシステミック・リスクを可能な限り防ぎたいと思っているのは確かです。 そのため、SVBはいわゆる管財人制度に移行し、FDIC (米連邦預金保険公社)が直接管理する新しい銀行組織の管理下に入ることになりました。 当局が今後急速な措置を取ることはないでしょう。 非常に計画的に動くことになると思います。 こうした事態に備え、当局には非常によくできたプレイブックが用意されています。 今回の事態は、この種の出来事としてはワシントン・ミューチュアル以来、最大のものですが、実際のところ、ある意味SVBの方が大規模だと言えます。 この銀行には多くの預金者がおり、一つの業界に非常に集中しているため、当局はこの管財手続きを可能な限り客観的かつ迅速に、注意深く実行しようとしています。
規制当局による閉鎖と完全な破綻との違いは何ですか。 また、シリコンバレー銀行が再生する可能性はあるのでしょうか。
SVBが再生する可能性は非常に低いでしょう。 つまり、再生への唯一の道は、ある種の民間資本による資本調達でしょう。 今回の規模は桁違いに大きいのです。 昨年、システムから何兆ドルもの流動性が失われたことをうけ、これまで長らく続いた状況が一変し、現在では資金調達が以前より難しくなっています。 民間の投資グループがそれを成し遂げるのは不可能でしょう。 規制当局は、SVBを再生させたところで、同種の問題がまた起こるだけではないかと非常に懸念していると思います。 つまり、再生の道を選ぶ可能性は低いと言えます。
SVBが保有する短期国債などの法人顧客資産は、管財手続きの中でどのように扱われるのでしょうか。 そうした法人顧客はそれらの資産にアクセスできるのでしょうか、それとも無保険の預金として扱われるのでしょうか。
カストディ・アカウント(証券保管口座)に預けられていた場合、それは預金口座とは質が異なります。 管財人の管理下に置かれるということは、すべてが法的拘束を受けるということです。 例えば、顧客がそれらの証券へのアクセスを希望した場合、月曜日には何も行われない可能性があります。 水面下ではこれに対応する意思があるとしても、その前に何らかの承認が必要になるでしょう。 私は、保管資産は保管を外すのが少し複雑なだけで、管財手続きの対象になるとは思いません。
SVBだけでしょうか。それとも他の銀行も、救済に乗り出すのではなく、実際には同じような事態が起こるリスクにさらされているのでしょうか。
この銀行には多額の資産と証券が集中しており、50%を超えています。これは銀行業界では非常に珍しいことです。 また、同行の預金と投資は同額ではありませんでした。 したがって、コマーシャルBDA、マネーマーケット、CD、および現金管理口座に眠っている機関投資家の資金が、一晩でホットマネーになる可能性があるという重大なリスクが組み込まれていました。 しかしこれは、そのようにモデル化されたものではなかったと思います。
銀行業界は、金利の上昇をこのような観点から捉え、流動性リスクというよりも金利リスクとして考えてきました。 また、流動性リスクをモデル化した場合でも、水面下にある証券の非流動性や、売却した場合の資本への純コストは考慮していませんでした。 つまり、売却用のポートフォリオが大きくなっている大規模金融機関のバランスシートの一部のデータ、これは公開されていますが、こうしたデータは、総資本に占める割合としてはかなり高いエクスポージャーレベルと解釈されます。ですから、その点を確認して検討する必要があります。
しかし、有価証券を満期保有に分類している銀行は、時価評価された未実現の損益を報告する必要がないため、見通しが立たないものもあります。 つまり、私たちには分からないのです。 そのデータを入手できる唯一の方法は、証券ポートフォリオの満期を調べることです。 そして、証券ポートフォリオに中期または長期のかなりのエクスポージャーがある場合、それは危険信号と見なすべきものです。
もう一つの考えるべきなのは、法人客を対象とするビジネスです。たとえば、貸付や銀行業務を扱うコルレス銀行、その他の法人向けサービス、カストディ型サービスなどがこれにあたります。 これらの銀行がこの種の問題を抱えているとは思いませんが、リスクとその推移を検討するのであれば、これらの分野も考慮する必要があるでしょう。
もう一つ、仲介CDを大量に保有している銀行にも注目すべきです。 今後、規制当局は流動性とその審査に重点を置くでしょう。十分な流動性がない、または今期はないかもしれないと判断された銀行は、規制当局から連絡が入り、流動性の問題への対処または新規の資本調達、あるいはその両方を行うようにと圧力をかけられるでしょう。
スティーブン・カリー氏について
スティーブン・カリー氏は、15年以上にわたり、米国の国法銀行や地方銀行、金融サービス会社、新興企業、個人投資家グループの経営陣や取締役会にアドバイザリーサービスを提供してきました。
テレカンファレンス中に聞いた、その他の質問
- まず、この24時間の間に起こったことと、現在の状況を説明してください。
- 規制当局による閉鎖と完全な破綻の違いは何ですか。 シリコンバレー銀行が再生するチャンスはありますか。
- 銀行が保有する短期国債などの法人顧客資産は、管財手続きの中でどのように扱われるのでしょうか。 そうした法人顧客はそれらの資産にアクセスできるのでしょうか、それとも無保険の預金として扱われるのでしょうか。
- これは誰もが気になっていることだと思いますし、冒頭でほのめかされたことですが、VCの状況とシリコンバレー銀行の資本額について考えたとき、この過剰に引き出された現金による恩恵を受ける可能性があるのはどの銀行だと思いますか。
- そのプロセスはどのようなものになるのでしょうか。 これは、いつ頃動き出すのでしょうか。
- これはSVBだけですか。それとも他にも似たような状況にあって、救済する側に回るのではなく、同様の事態に陥るリスクがある銀行はありますか。
- 広範な波及リスクや、特にSVBの債権者の事態を転換させるためのスケジュールが長期化する可能性など、現時点で最も注意を払うべき指標や危険信号は何ですか。そして無保険預金の支払いの優先順位、または無保険預金とFHLBの前払い金の支払いの優先順位はどうなっていますか。
- 残念ながら、SVBに資金の大部分を預けているという企業にとって、現在のシナリオを乗り切るためには、どのような選択肢と方法がありますか。 FRBが介入して、シリコンバレー銀行の有価証券の一部を担保として、同行に流動性を提供することはできますか。
- 規制当局が超大手銀行に対して預金保護の上限規制を回避する免除を認める可能性はどのくらいありますか。それについてどう思いますか。
- このシナリオで最終的なコントロールを握っているのはどの規制当局ですか。 FDICですか。それともカリフォルニア州の金融規制当局ですか。
- このシナリオで、SVBを超えて広がるリスクについて、どのような総合的見解を持っていますか。
- 預金者に与えられたFDICからの管財人証書は、暫定的な流動性を得るための担保として他の銀行に受け入れられますか。
- ファースト・リパブリック銀行とその事業についてどの程度ご存じですか。また、この銀行は、シリコンバレー銀行と、どの程度類似していますか。
- シリコンバレー銀行は、このようなことが起こった場合の流動性要件に適合していましたか。
- シリコンバレー銀行を決済手段に使用しているフィンテックに関する別の質問です。 事業継続に関連するリスクと、それらの事業の損失の可能性について教えてください。
- SVBは、資産の50%以上を有価証券で運用することをどのように正当化したのでしょうか。
- ご自身がこのシナリオの投資家だったら、何に最も注意を払いますか。
- ご自身の経験を踏まえると、今日は聴衆に何を伝えたいですか。
これら全ての質問への回答、テレカンファレンスの全文は、GLGライブラリーでお読みいただけます。ご購読をご希望される場合は、GLG担当者までお気軽にご連絡ください。
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