調査の質を高める、自由回答(オープンエンドクエスチョン)の正しい使い方

調査の質を高める、自由回答(オープンエンドクエスチョン)の正しい使い方

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自由回答形式の質問は正確に理解するのが難しいという性質があります。間違った方法で構成されると、分析に手間取るデータをつくり出してしまいます。この形式の質問に頼りすぎると、データの質が低下し、離脱率が高くなります。一方で、十分に活用できなければ、貴重なデータを取り逃がす恐れがあります。つまり、バランスが重要になります。


良い自由回答形式の質問というのは、回答者が自らの経験に基づいて思慮深く、有意義に回答できる自由度をもち、かつ回答者がそのテーマから離れてしまわないようにうまく構成されています。どうすればこのバランスを取ることができるでしょうか。最初のステップとして、まず、自由回答形式の質問を正しく構成する方法を学びましょう。

 

一般的な自由回答の3つのパターン

1. 論述形式

 

 

 

これは自由回答と聞いて最初に思い浮かぶ形式ではないでしょうか。空白の回答欄を与えて、自由に回答してもらうものです。

長所:自由回答形式で質問しなければ出てこないような、フィルターにかけられていないフィードバックを得ることができます。このタイプの情報は、人々が何を考えているかを理解する上で非常に貴重なものとなります。さらに、思いもよらなかったフィードバックを引き出すことができるかもしれません。

短所:サーベイに参加して数問回答すると、質問のパターンが見えてきます。そのサーベイがどのように構成されているのかがなんとなく分かってきて、回答に集中し始めます。そこで論述形式の質問が出てくると、驚いて立ち止まります。脳の別の部分を使うために頭を切り替えなければならないため、流れが中断されてしまうのです。3 ~ 4つの論述形式の質問であれば、サーベイに最後まで回答するのを思いとどまらせる可能性は低いですが、それ以上になった場合には、回答をやめることを真剣に考えさせてしまうかもしれません。

 

2. フォローアップ質問

 

他の質問と組み合わせて自由回答によるフォローアップを行うことで、詳細な意見を引き出すことができます。最初の質問の答え方によって、それをフォローアップする自由回答の質問の答え方が変わります。

長所:フォローアップ質問は、回答者の回答をより深く掘り下げるのに優れた方法です。また、回答者は画面上に表示されている自分の答えに対してフォローアップ回答を行うので、回答が話題から逸れてしまうこともほとんどありません。

短所:回答者の中には、すでに回答しているので何も付け加えることはないと思う人がいるかもしれません。回答必須にしたところで、「追加回答なし」「特になし」などの空返事で終わってしまう可能性もあります。

 

3. その他 (具体的に記述してください)

 

回答の選択肢の中に、「その他(具体的に記述してください)」という形で自由回答ができるようになっていることがよくあります。これは、最も一般的な自由回答の形式で、回答者にとっても最も記入しやすいものです。

長所:回答の選択肢を包括的かつ網羅的にすることができます。目標は、回答の約80%〜90%を選択肢から回収し、「その他(具体的に記述してください)」という選択肢を設けることで、残りの補足できない回答を回収することです。そうすることで、回答者の体験を最適化することと、手作業で分析が必要とされるデータ量を制限することのバランスをとることができます。

短所:回答が多様な場合、これらの回答を体系化することは難しいでしょう。

 

よくある誤り

  • 過度の依存 自由回答形式の質問は、回答者への負担が大きくなります。自由回答の質問が多すぎると、離脱率が高くなったり、注意深く考えられた回答が少なくなったりします。回答をほぼ予測できる場合には、自由回答形式の代わりに「その他(具体的に記述してください)」を使用することで補足を得ることにとどめましょう。
  •  データが多すぎる 最終的に情報を総合する必要があることを忘れないでください。合理的に分析できることだけを質問しましょう。許容範囲は、サンプルサイズ、回答の長さ、分析にかけられる時間に応じて異なります。サンプルサイズが30のサーベイで、「その他(具体的に記述してください)」の自由回答形式の質問のみを使用するのと、サンプルサイズが100のサーベイでいくつかの論述式の質問を使用することは大きく異なります。回答者への要求を具体的にすると、期待値をコントロールすることができます(例:「1つか2つの単語で答えてください」「いくつかの文章で詳細に述べてください」「総括して述べてください」)。
  • 解釈不足 書き言葉は口調や抑揚、態度や背景の前後関係などが現れません。結果を解釈する方法に気を付けてください。特に、曖昧な回答の場合、解釈が偏る可能性があります。データセット全体で同じようにフレーズを解釈し、分類していることを確認してください。疑わしい場合には、特定のフレーズをどのように解釈するかルールを決めておくとよいでしょう。
  • ダブルバーレル質問 複数の課題やテーマについて言及した質問をしながら、ひとつだけ回答を求める質問です。自由回答形式の質問の難点は、すべての人が明確に回答するとは限らないということです。回答者が1つの課題についてのみ回答をした場合、またはどちらの問題について回答したか明確でない場合、回答を解釈するのが困難となってしまいます。複数の課題について質問する必要がある場合は、質問を分けてそれぞれに回答できるようにしてください。
  • 曖昧な質問 曖昧な質問からは曖昧な答えしか得られません。回答者にどのように回答してほしいか、またどのようなデータを収集しようとしているかをよく考えましょう。その上で、それを達成するのに十分明確なほど具体的な質問をするようにしましょう。それぞれの回答者が同じような回答をすることによって、結果を同じように解釈できることが理想です。
  • 質問しない ここまでは、自由回答形式の質問の制限と形式について紹介してきました。しかし、どのようなサーベイでも、少なくとも1つか2つの自由回答形式の質問を含むべき理由があります。自由回答形式の質問は回答をごまかしにくいため、回答の質を測るための基準を提供してくれます。また、回答者に力を与えることができます。人は自分の意見に価値があると思いたいものです。こうすることで、回答者に付加的な事情や微妙な差異を語ってもらう機会にもなり、回答者の関心をサーベイに向けておくことができます。

 

最後にもう一度考えてみる「必須か任意か」

回答者全員がその質問に対する答えを持っていると考えられる質問でしょうか? もしそうではない場合、回答してもらわないようにしてください。つまり、決して「該当なし」や「コメントなし」と書かせないようにするということです。その質問は任意回答にし、回答をパスしてもらうようにしましょう。反対に、すべての人が答えてくれるに違いない質問であれば、必須回答にして、最低限の自由回答式の質問をサーベイの終わり付近に入れることを検討してください。こうすることで、回答者はもっとも大事な質問に対してより思慮深い態度でのぞむことができます。

 

覚えておくべき重要ポイント

人は自分の意見が重要だと感じたいものです。自由回答式の質問は、その使用頻度と構成が適切であれば、回答者に独自の見解を述べる力を与えます。その結果、分析に役立つより詳細なデータと、より真摯に取り組まれた回答が得られるようになるはずです。

 


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筆者について

ウィル・メラー(WILL MELLOR), GLGサーベイチーム ディレクター
北米のフィナンシャルサービスを援助する上級のプロジェクトマネージャで構成されたチームを牽引。チームは、原案から最終的な成果物まで、エンドツーエンドでサーベイの実施から納品までを管理。サーベイ設計と調査に加えて、GLGのインターナル・メンバーシップと消費者に関する有識者でもある。前職は、経済系コンサルティンググループのヴァイスプレジデントとして、パブリック、プライベートセクターのクライアント向けのエコノミックインパクトモデルの設計を担当。国際ビジネスおよびファイナンスで学士号、応用経済学で修士号を取得。


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