医薬品の受託開発および製造機関の現状

医薬品の受託開発および製造機関の現状

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医薬品開発製造受託機関(CDMO)とは、医薬品の発見から商業化の機会まで、さまざまな方法で製薬/バイオテクノロジー/アカデミアに貢献する多様な企業グループのことを指します。これらの企業は、非常に広範で非常に断片化されたエコシステムを構成しており、(究極的には)大手製薬会社がアウトソーシングを継続する意向があるため、そのエコシステムは成長し続けています。

 

CDMOの課題

アウトソーシングは様々な産業分野や地域で行われ、その需要は拡大し続けているため、人材の確保はCDMOが直面する最大の脅威であり、課題であると言えるかもしれません。特に細胞・遺伝子治療のような今日の需要の高い分野では、優秀な人材の確保と維持にコストがかかります。人材流出は、このような大手のCDMOが歴史的に享受してきた粗利や利益に悪影響を与えます。

別の課題は、支払者への償還メカニズムの変化と、どのように研究資金が調達されるか、そして最終的には医薬品償還の観点で研究がどのように報われるかです。細胞・遺伝子治療プロジェクトの場合、どのソリューションが個別化されたアプローチになるのかということではなく、どちらのソリューションがスケーラブルで多くの患者さんに利用されるのかが問題となります。前者は、5年前には非常に注目されていましたが、今は償還条件の関係でリスクが高いかもしれません。しかし、CDMOの効率を最大化するためのワークフローの自動化やソフトウェアの改良には大きな進歩が見られます。

しかし、CDMOがどのようなGo-to-Marketソリューションを選択するにしても、効率性が重要な鍵となります。効率性には、コストの管理だけではなく、クリーンで質の高い監査や、試験的な実施から臨床生産への迅速な移行能力も含まれます。

 

CDMOの成長分野

細胞・遺伝子治療に加えて、CDMOが成長を遂げている他の分野は、栄養補助食品や発酵を伴う食品健康成分です。このビジネスの一部はコモディティ化する傾向があり、マージンはCDMOが慣れ親しんできたものよりも低くなる可能性があります。しかしこれは量での勝負になるでしょう。他には、食品の貯蔵寿命、品質保持期限 または賞味期限の延長を可能にする製品が開発されることでしょう。また、腸や脳の健康に関連する製品も登場すると思われます。中枢神経系や循環器系の問題への取り組みは、栄養補助食品の研究から派生したものです。後者においては、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症などを対象とした研究が行われています。中枢神経系治療の市場は、より広範な市場として注目されており、さらに強力な研究開発の成長が期待されています。

インフレと金利上昇の時代にこれらのプロジェクトに取り組むにあたり、CDMOはいくつかの経済的な方法を検討することになるでしょう。彼らは、人件費、特にフルタイム当量(FTE)コストを慎重に検討し、自動化されたプロセスや新しい機器の使用を拡大して、生産量を増やし、単価を下げることを検討するでしょう。これには、人工知能の活用が進むと思われます。また、生産能力を移管しようとする大手製薬会社と取引し、その対価としてCDMOが長期的な販売契約を結ぶことも検討されるかもしれません。多くのCDMOにとって、これはリスクの少ない拡大方法となることでしょう。

 

CDMO業界の展望

CDMO業界の展望としては、今後さらに統合が進むと思われます。プライベート・エクイティ会社がポートフォリオを再編成し、所有権の移転を伴う取引が増えることは間違いないでしょう。しかし、全体としては、この業界はうまく行くでしょう。テクノロジーは、5年前、10年前には考えられなかったような方法で中小企業に力を与えていますが、大手製薬会社が、食品医薬品局によって施行された、現行の適正製造基準(CGMP)に準拠した製造パートナーを持つ必要性は何も変わりません。

ここ数年、大手製薬会社は、サービスプロバイダーへのアウトソーシングを積極的に行ってきました。その結果、一つのことしかできないCDMOよりも、より統合されたサービスを提供するCDMOの方が、はるかに良い結果を出しています。例えば、パッケージング、ラベリング、流通、地上チェーンロジスティクスのサポート、倉庫管理などを提供するCDMOは、大手製薬会社がベンダーの数を減らそうとしているため、戦略的にはるかに有利な立場にあります。

CDMOが医薬品の早期発見において重要な役割を果たし、効率的で価格に敏感な小規模CDMOの大規模なエコシステムが存在し続ける限り、このセクターは繁栄することでしょう。

 


マシュー・ジョーンズ氏について

現在、ライフサイエンス・セクターの独立アドバイザーであるマシュー・ジョーンズ氏は、28年以上にわたって同業界の上級職に就いてきた。直近では、ロンザグループのバイスプレジデント、営業・事業開発グローバル責任者を務め、グローバルな商業契約開発及びCDMOサービス、グローバル事業開発、営業の指揮を執った。


本記事は、GLGテレカンファレンス 「ロンザとCDMO 業界 」を基に作成しています。テレカンファレンス全文のトランスクリプトは、GLGライブラリーのご購読でご覧いただけます。また、マシュー・ジョーンズ氏や、その他の製薬業界の有識者へのインタビューも実施可能です。GLG担当者まで、お気軽にお問い合わせください。

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