フェムテックおよびマタニティサービスの大規模な成長可能性

フェムテックおよびマタニティサービスの大規模な成長可能性

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産科のためのソリューションをめぐる業界は、妊娠をモニタする消費者向けテクノロジーであれ、医療提供者と雇用者を結びつけるソリューションであれ、いまだに初期段階です。しかし、ブルームライフ社の共同創立者兼CEOのエリック・ダイ博士によると、そのビジネスチャンスは非常に大きなものです。以下のQ&Aでは、GLGの幅広いディスカッションの中から一部抜粋して、博士の考察を共有します。

妊産婦の健康を目的ととしたフェムテックの一般的な市場規模はどの程度ですか?

まだ開発途上の市場であるため、市場規模を具体的に示すことは困難です。米国では、年におよそ400万人の新生児が生まれ、妊娠と出産に1,000億ドル以上を費やしています。これは先進国の中で最多ですが、最悪の結果を招いています。米国では、約10人に1人の新生児が早産で生まれています。これらの早産児は通常、新生児集中治療室に入ることになり、医療保険コストの大幅な増大要因となっています。

米国では、約12%の女性は臨床的にリスクが高いと見なされています。この数は、母親の高齢出産や慢性疾患の増加などいくつかの要因により増加しています。また、多くの社会的決定要因も高リスク化を後押ししています。問題は、ハイリスクの妊娠が増える一方で、医療従事者が不足していることです。米国の約50%の郡で基本的な産科のサービスが不足しており、例え産婦人科医であっても、産科医療に携わらない医師が増加しています。

出産看護の包括支払い方式で、医師には一定の報酬が支払われます。通常、妊娠期間にわたって約5,000~7,000ドル程度です。妊娠中の費用の大部分、約70%は、陣痛、出産、産後ケアなど妊娠の第三期(25週目から分娩まで)に発生します。そのため、これらの費用を少しでも軽減することができれば、それは大きなビジネスチャンスです。

 

基本的な経営モデル、そのモデルの価格決定の仕組み、大きなコスト要因、またはリスクや脆弱性となる領域は何ですか?

低リスクの妊産婦のケアに対しては、包括支払い方式から支払われます。包括支払い方式には、すべての妊婦健診の往診、出産、産後6週間~8週間が含まれます。包括支払い方式に含まれないものには、超音波検査、ノンストレステスト、および、すべての遺伝子検査などが含まれ、これらは料金ベースで支払われます。産前産後のうつ病は、現在ではスクリーニングも管理も不十分な大きな問題です。一般的に民間の保険業者によってカバーされていますが、ほとんどの場合、産前および産後うつを効果的に治療または管理するために必要な幅広いケアをカバーされていません。

産科の経営学には興味深いものがあります。多くの医療制度では、産科のケアは低価格です。そうした状態を究極的に支えているのは、異なるタイプの保険者の混在です。民間の保険業者の患者数が多い場合、若干、利益がでる可能性があります。メディケイド(米国の州が運営する低所得者向け医療費補助制度)の患者の割合が高い場合、医療提供者には赤字になります。

最大のコスト要因およびリスクや脆弱性となる領域という点で、保険者はすべての医療費の多額の負担を支えており、誰もが懸念している最大のコスト要因は早産です。NICUは、通常、病院の中で最大のコストセンターの1つです。保険者にとって難しいのは、誰が早産になるか予測するのが難しいことです。そのため、ある年に早産が多発した場合、100万ドルの費用がかかる新生児が2人か3人のいれば、医療保険全体や財務を破綻させてしまう可能性があります。

もう一つの大きなコスト要因は、不要な治療の介入、特に帝王切開についてです。米国では、帝王切開率は30%を超えています。世界保健機関(WHO)は、帝王切開の割合を15%に近づけるよう推奨しています。帝王切開による陣痛、出産、および産後のケアは、普通分娩の2倍以上になる傾向があり、多くの合併症も引き起こすします。ハーバード・ビジネス・レビューで読んだ統計によると、帝王切開の割合が1%減少すると、雇用主は年間1億ドルを節約できるそうです。陣痛、出産、分娩時のケアに巨額な費用が発生しているため、これらを管理するよい方法があれば、医療システムのかなりのコストが不要になるはずです。

 

今後の成長の見通しと、成長の主要な原動力は何でしょうか?

全体として、女性の健康、特に妊産婦ケアに関するアンメットニーズに対して、投資家の関心が高まっています。マタニティケアのさまざまな側面に取り組みに対して、より多くの資金を投入され、さらに多くの企業が設立されることが予想されます。企業の中には、ケアコーディネーションに重点を置いている企業もあり、 ケアプロバイダーがより良い患者ケアを行うためのツールの役割を目指す企業もあります。遠隔で患者をモニタリングするための技術や、妊娠をモニターするための専用ウェアラブル技術もありますし、サービスの側面に重点を置いている企業もあります。

大きな成功を収める企業はリスクをクリーニングするだけでなく、そのリスクを軽減するための適切な介入方法を見出すでしょう。医療従事者はリスクを管理したり予防したりする良い方法を持たず、全く対処しないことが多いため、医療介入はしばしば産科医療における最大の障害のひとつとなります。例え何もできなくても、リスクを十分に評価し、それを患者さんに伝える必要があるという考え方が、臨床界の中で変わりつつあります。

今後3〜4年は、これらの企業のほとんどが独立した存在を維持し、その後、特にこれらの製品がもたらす効果を実証するデータやエビデンスが入手可能になれば、いくつかの企業の合併が始まるだろうと予想しています。最終的には、こうしたさまざまなソリューションが統合されることで、ケアの提供方法が変わっていくのです。

 

新型コロナウイルス感染症は、この業界のキープレイヤーや動向に影響を与えていますか?

私たちが見てきたものは、ヘルスケアの他の分野とよく似ています。以前から予測されていたトレンドが加速しており、最大のものは遠隔医療への移行です。医療機関や医療システムは、医師と患者がCOVID-19にさらされるのを最小限に抑えようと、妊産婦の診療を遠隔で提供する方向にシフトしています。患者が来院する時間を最小限にするため、診察のスケジュールを変更する方法を考え出しました。パンデミック以前は、カリフォルニア大学サンフランシスコでの遠隔医療は3%~5%ですたが、現在では50%以上になっています。これは、一般的に保守的な医療従事者が多い領域にとって、大きな変化と言えるでしょう。医療従事者は、患者が自分で多くのことを管理できるようにすることに次第に慣れてきているようです。場合によっては、患者さんがこのようなケアモデルを好むこともあります。

診療報酬の公平性は、このような医療提供を可能にする大きな要因となっています。新型コロナウイルス感染症の終息後に何が起こるかについては、大きな疑問がありますが、診療報酬の面で強調しておかなければならないのは、産科医療はしばらくの間包括支払い方式で支払いを受けてきたことです。つまり、低リスクの妊娠であれば、医師と臨床チームが出産前のケアに対して定額を受け取ります。母体・胎児医学の専門医は包括支払い方式の対象に入らないため、専門医にとってこの報酬の公平性は非常に重要でした。しかし、現在はまだ新型コロナウイルス感染症が流行中のため、パンデミック後の世界で保険者が対面診療を求めるかどうかは大きな疑問です。

 

この分野でのM&Aや投資の最大の機会は、短期的/長期的にもどのようなものでしょうか。

短期的には、産科医療や妊産婦医療など、より包括的なサービスを提供するプロバイダーグループをパッケージ化する試みが増えると思われます。産前ケアの分野では、産科医や看護師が監督する可能性のある助産師主体のケアなど、さまざまなモデルについて考えてみてましょう。産科医と助産師を比較した場合、助産師を利用する価値があることは、強力で説得力のあるデータで示されています。助産師は、米国では平均して年間10万ドルから12万5,000ドルかかりますが、産科医は25万ドルかかることがあります。助産師は産科医の2倍の時間を患者と過ごすことができ、その分、教育支援やリスクについて総合的に考え、信頼関係を構築する機会が増えるのです。

デジタルヘルスや遠隔医療を実現するために、テクノロジーベンダーの選択的な買収や合併が行われるでしょう。これらのソリューションが成果だけでなくコストにも影響を与えることが証明され始めているので、保険者や雇用主との直接契約が行われるようになることも予想されます。

大きなチャンスは、産科医療を取り巻く経済状況を変えて、より収益性の高いものにする方法を見出すことです。多くのシステムは、多額の資金を費やしていますが大きな成果を上げられていません。


エリック・ダイ氏について

エリック・ダイ博士はブルームライフ社の共同創立者兼最高経営責任者です。ブルームライフ社は女性の健康に関する企業であり、妊産婦の健康について最も重要でありながら十分なサービスを受けていない世界的な課題の解決に取り組んでいます。バイオエンジニアリングと医用生体工学(PhD、UCLA)の経歴を持ち、欧州の一流先端的研究所であるIMECのための事業開発を担当する傍ら、多くの専門分野をカバーする技術知識を活用して、次世代のシーケンシング、リモート患者モニタリング、特殊撮像装置、および混合信号チップ設計などの分野を横断した戦略的パートナーシップ を構築することに成功しました。IMECでの4年間の事業開発で、新規に17件のパートナーシップを結び、2,500万ドル以上の収益を達成しました。また、多数の査読付き出版物を発行し、5件の特許を取得しています。


この記事は2020年9月22日のGLGテレカンファレンス「フェムテックおよびマタニティサービスの成長可能性:プライベートエクイティ投資」から抜粋されています。テレカンファレンスへの参加、またはエリック・ダイ博士や世界中の有識者や専門家との対話をご希望の方は、こちらからご連絡ください。

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