東南アジアにおけるフィンテック産業

東南アジアにおけるフィンテック産業

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ヒンドュスタン・タイムスの記事は、ベトナムのフィンテック産業の市場規模は2024年に180億ドルに達する見込みであると報じています。しかし、これは目新しい傾向ではありません。The Fintech Timesの別の記事では、東南アジアでは2000年以来、フィンテック企業の数が3588%という驚異的な伸びを見せていると報じています。この急速に成長する市場を理解するため、GLGは、GLGのアドバイザーであるフィンテック業界のシニアエグゼクティブとのテレカンファレンスを開催しました。以下は、そのテレカンファレンスからの抜粋です。

東南アジアはフィンテック産業の次のホットスポットになりつつあります。その理由を教えていただけますか?

東南アジア(SEA)におけるフィンテックの成長は、SEAの各大規模経済圏で急成長する中産階級が牽引しています。例えば、インドネシアでは、中産階級の人口はすでに5400万人で、次の4000万人は、収入およびライフスタイルの向上が間近に迫った「意欲的な層」です。

一方、こうした個人の多くは非銀行利用者層であるか、銀行口座を持っていません。つまり、フィンテック業界はイノベーションを飛び越え、例えばデジタル決済や融資を導入することで、彼らのライフスタイルおよび日常経済を支援することができます。

また、SEAでは、主にデジタル決済およびフィンテックによって実現されるeコマース、配車サービス、フードデリバリー、その他のオンデマンドサービスを推進するスーパープラットフォーム経済の成長によって、デジタル経済の浸透がさらに進んでいます。

最後に、特にフィンテックに関連する新しいデジタルイノベーションに関しては、SEA諸国全体で非常に寛容なガバナンスと規制の枠組みが存在しています。例えば、決済に関する相互連携、モバイル決済を可能にするための国境を越え標準化されたQRシステム、国内での決済の種類および資金移動に関するライセンスの合理化などがあります。これもまた、東南アジアにおけるフィンテックの成長を加速させる原動力になるでしょう。

東南アジアにおけるこの業界のパンデミック前後の比較をしていただけますか?

パンデミックおよびロックダウンは、東南アジア諸国全体に非常に急速な変化とフィンテックの導入をもたらしました。これは主に、ロックダウンとそれに続いて起こったオフライン取引の減少により、eコマースを通じたオンライン取引が増加したことによって引き起こされました。

こうした取引は、モバイルやデジタル決済によって可能になりました。例えば、2020年のパンデミック以前は、インドネシアにおけるeコマースの普及率は小売全体の約8%程度でした。しかしパンデミック後の2022年には、eコマースは小売業のGMV(流通取引総額)の約180億ドルに達し、その額は小売全体における普及率の約13%に相当します。

もう1つは、パンデミック時代の個人トレーダーや個人投資家の台頭で、これがAjaib(アジャイブ)、Pluang(プルアン)、Barisa(バリサ)といったウェルス・テックやインベスト・テックのアプリケーションを推進しました。また、こうした個人投資家が、デジタル経済やデジタル資産投資に初めて参加することを可能にした仮想通貨取引プラットフォームの台頭も同様です。パンデミック以前、インドネシアの個人投資家は100万人程しかいませんでした。しかし、現在ではすでに、個人トレーダーの数は1000万人近くにまで急増しています。

市場需要や製品およびサービス提供の観点から、この業界の概要を教えていただけますか?

需要は大きく、供給を上回っています。現在SEAでは、消費者金融の総需要は約3000億ドルですが、消費者ローンの供給額は約1500億ドルと、依然として需要の半分にすぎません。現在増加中の中産階級の裕福な消費者からの需要は、この需給ギャップをさらに拡大することになるでしょう。

このギャップにより、フィンテックプレーヤーはイノベーションを起こし、アクセスを拡大するための資金提供およびインフラの提供を行うことが可能になります。現在、この需要は東南アジア各国の大都市である一線都市に集中しており、二線都市や三線都市にはまだ浸透していません。

これも、フィンテックプレーヤーにとって、例えば、融資を提供する代理店ネットワークやデジタルフィンテックソリューションの浸透を利用するなど、アクセスを拡大するチャンスとなります。

今後数年間で、収益性の高いフィンテック市場になる可能性があるのはどの経済圏か教えていただけますか?

ベトナムは非常に急速に成長しており、デジタル経済が浸透しています。例えば、eコマースにおいて、ベトナムはインドネシアに次いでSEAで2番目に大きな市場となっています。インドネシアのeコマース市場規模が830億ドルであるのに対し、ベトナムは290億ドルであり、かつ前年比40%増と急成長しています。

ベトナムでは、以前中国やインドネシアで見られたようなデジタル決済、決済インフラ、eコマースの融合が見られます。しかし、ベトナムはまだ追いついたばかりです。最近、ベトナムからも最新のユニコーン企業が登場しています。例えば、MoMo PayやVNPAYは、ベトナムの地元コングロマリット(複合企業)によって株式を引き受けられ、支援されています。こうした最近のIPO(新規株式公開)による資金注入は、これらのベトナムのユニコーン企業がデジタル経済の成長を後押しするのに役立つでしょう。

特にインドネシアやタイと比べると、ベトナムの人件費はまだ比較的安いです。また、ベトナムのIT、エンジニア、ソフトウェア開発者の質も急速に向上しており、多くのソフトウェア開発会社がベトナムから出現し、中国、インド、一部の欧米先進国市場を含む他の市場にサービスを提供しています。人材の観点から見ると、ベトナムはデジタル経済を支え、フィンテックの成長を後押しする、デジタルに対応できる要員の種類や数が不足しているわけではありません。

テレカンファレンス中に聞いた質

  • 東南アジアはフィンテック産業の次のホットスポットになりつつあります。その理由を教えていただけますか?
  • 2022年現在、東南アジアのフィンテック産業はどのような状況にあり、現在の市場規模はどの程度でしょうか?
  • 東南アジアのこの業界について、パンデミック前後を比較して、パンデミック前にはどのような要因が存在し、パンデミック後どのような変化があったのか、お聞かせいただけますか?
  • 東南アジア諸国連合(ASEAN)は、主要なフィンテック分野で、どのような形でイノベーションを推進してきたのでしょうか?
  • 東南アジアにおけるこの業界の主な市場プレイヤーは誰ですか?また、今後2年間に新たなプレイヤーが出現すると予想しますか?
  • 市場需要や製品およびサービス提供の観点から、この業界の概要を教えていただけますか?
  • スタートアップや新しい起業家にとって、この業界における最大のチャンスはどこにあるのでしょうか?
  • この業界の地域市場を、過度に発展した市場、比較的発展した市場、発展途上の市場に基づいてどのように定義しますか?
  • 今後数年間で、収益性の高いフィンテック市場になる可能性があるのはどの経済圏でしょうか?
  • フィンテック業界における東南アジア市場での分散型金融(DeFi)およびロボティック・プロセス・オートメーションの進展について、注目すべき点を教えていただけますか?
  • 東南アジアのモバイル決済市場の最新動向について教えていただけますか?
  • フィンテック産業は、東南アジア諸国における金融包摂をどのように推進できるとお考えですか?
  • この業界が現在直面している課題や障害は何ですか?
  • この業界を後押しするために、どのような政府および規制政策が導入されましたか?他にどのような規制が必要だと思いますか?
  • 今後5年間、東南アジアのフィンテック産業はどのような方向に向かうとお考えですか?また、どのような市場動向が予測されますか?

この記事は、GLGテレカンファレンス「Fintech Industry in Southeast Asia – What are the Opportunities of SEA’s Massive Unbanked Market?(東南アジアのフィンテック産業:SEAの大規模な非銀行市場にはどんな機会があるのか?)」からの抜粋です。テレカンファレンス全文のトランスクリプトは、GLGライブラリーのご購読でご覧いただけます。

また、GLGでは、世界で100万人以上の業界有識者へのインタビュー(スポットコンサル)もご提供しています。フィンテックや金融サービス業界のさらなるインサイトを必要とされている場合は、お気軽にお問い合わせ下さい。

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