2024年 EV(電気自動車)の価格設定

2024年 EV(電気自動車)の価格設定

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2023年、中国、欧州、米国といった主要市場でEV(電気自動車)の販売台数が大きな節目を迎えました。しかし、記録的な販売台数にもかかわらず、その伸びは自動車メーカーの期待を下回るものでした。

EV需要の見通しと業界における混乱の可能性を明らかにするため、GLGは、自動車市場で30年以上の経験を持つベテランの業界有識者、マーク・ロビンソン氏に話を伺いました。

2023年のEV需要の伸びと、2024年のEV市場の位置づけについてお聞かせいただけますか?

中国、欧州、米国の3大市場において、EVについてそれぞれ異なる視点で考えることが重要です。しかし、2023年に3つの市場すべてでEVの販売台数が過去最高を記録したのは事実です。例えば、米国では史上初めてバッテリーEVが100万台を突破しました。しかし、OEM(Original Equipment Manufacturer)は販売台数がもっと伸びると予想していたため、3つの市場とも、その伸びはやや期待外れでした。全世界で約800万台のバッテリーEVが販売され、市場シェアは米国で8%、欧州で16%、中国で25%と、3つの市場すべてで過去最高を記録しました。プラグインハイブリッド車(PHEV)を加えると、米国で18%、欧州で24%、中国で37%になります。これらは、10年前であれば驚くような数字だったでしょう。しかし、自動車メーカー各社は販売台数がもっと伸びることを期待していましたし、率直に言って、市場占有率ももっと高くなると予想していました。彼らは全員が勝者になると予測していたのです。

米国で8万台ほどの電気自動車を販売したフォードは、2026年までに200万台のEVを販売すると話しており、約7万台を販売したGMは、2025年末までに100万台を販売すると話しています。テスラは毎年40%の成長率を見込んでいます。つまり、メーカーは、新製品の発売や生産能力の拡大を若干縮小しているものの、2024年、そしておそらくそれ以降も、かなりの余剰生産能力があるということです。

売れ行きが期待外れだった理由についてもお話ししましょう。その理由のひとつは、OEMが、EV産業の製品開発が変曲点を迎えており、開発された製品が急速に大衆市場に投入されると予測していたことです。例えば米国では、パイオニアやアーリーアダプター(初期採用者)はすでにテスラを持っています。そのため、アーリーマジョリティー(前期追随者)の購入者は動機が異なり、OEMは消費者のEVへの移行に抵抗していることにやや驚いたと思います。このようなアーリーマジョリティの購買層は、より現実的であるため、例えば充電の利便性、寒冷な気候と不安定な充電システムによる航続距離への不安などの問題が、普及を遅らせたり、消費者の買い控えを起こしたりしています。

そして、自動車メーカーが強力な動機付けになると期待していたEVに対する政府のインセンティブや補助金は、やや期待外れだったと思います。少なくとも販売面では、それらはかなり複雑で、EVのサプライチェーンを米国にもたらそうとする産業政策の一環として意図的に計画されています。また、中低所得者層のみが利用可能できるように設計されていました。これまでのところ、こうしたインセンティブは購入に対する補助金よりも、リースに対する補助金としての方が効果的だったと思います。また、少なくとも米国では、EVが短期的・長期的な意味合いを持つ、非常に政治的なものになっていることも事実だと思います。一方、欧州では、電動化の必要性についてはより多くの合意が得られていますが、特にドイツとフランスでは自動車業界への影響が懸念されています。例えば、ドイツでは2022年末にEV優遇措置が廃止され、EVの普及が遅れました。欧州はまた、中国からのOEM参入を懸念しており、その見直しに着手したため、輸入品や中国メーカーに何らかの制限を課そうとするかもしれません。

したがって、2024 年も売上高は増加し続けると予想しますが、OEMにとっては残念なことに、生産能力は販売量を上回るペースで伸びており、これは長期的な影響を及ぼすことになるでしょう。

BYDは、2023年第4四半期にテスラの484,000台に対して526,000台を販売し、テスラを抜いて世界で最も売れている電気自動車メーカーとなり、EV市場を混乱させました。BYDの台頭と2024年におけるBYDの位置づけについてお聞かせいただけますか?

もちろんです。BYDは注目に値します。BYDは中国のEV市場で35%のシェアを持ち、圧倒的な地位を確立しています。中国市場は圧倒的に大きいため、規模が大きくなり、最も低コストで生産できる場所でもあります。EVを戦略産業とみなす政府には、飛躍のチャンスがあります。そしてある意味で、中国は真に生産性の高い分野に参入できないという、いわゆる中所得国の罠を非常に懸念しています。中国政府はEVを中所得国の罠から脱出するための重要な産業のひとつとみなしており、長い間EV産業を支援してきました。そのエコシステム全体への中国政府による支援により、BYDは重要なアドバンテージを得ることができるのです。

また、中国の消費者が中国ブランドをますます好むようになっていることも事実で、特に米中間の緊張が高まる中、BYDはテスラよりも有利な立場にあります。しかし、BYDはテスラと真っ向から競合しているわけではありません。本質的にEV市場は中国で二極化しており、近い将来世界の他の地域でも同様になると思います。 BYDが圧倒的にリードする低価格EVと、テスラがリードする高級EVです。

BYDは非常に野心的な拡大計画を持っています。インド、タイ、そしてインドネシアで自動車を製造する計画を発表しています。つまり、BYDは世界各地に進出しようとしているのです。ハンガリーにも段階的に進出する計画を発表しており、これがヨーロッパ進出の基本計画となっています。そして、ヨーロッパ全土の19カ国で、小売店舗の立ち上げに忙しくしていると思います。昨日、メキシコに工場を立ち上げるための集中的な協議を行っているという話があったばかりです。メキシコ、カナダ、米国間の貿易協定であるUS MCNを活用して、米国への論理的な輸出拠点が確保されることになるでしょう。

つまり、BYDがテスラを追い抜くことができたのは、ほとんどすべて中国での販売によるものでした。これは、中国では通常、第4四半期に非常に売上が上がる時期であることも一因ですが、BYDは長期的には間違いなく主要なプレーヤーになるでしょう。BYDは驚くほど低価格で、非常に優れた自動車を販売しています。中国では高品質のEVが11,000ドルで販売されています。

過去1年間に、EVの分野で論じるべき新しい技術開発はありましたか?

技術的な発展としては、テスラが採用した新しい製造アプローチ、ギガキャストがあります。これは画期的な自動車製造方法です。基本的には鋳造品を作り、それを合体させることで、より効率的な組み立てを実現し、重い金属板の代わりにバッテリーを車両の床として使っています。そうすることで、重量とコストの両方を削減できます。ゼネラル・モーターズもギガキャストを模索していると発表しました。これは大きな進展です。

それから、バッテリーの分野でも革新的な取り組みが続けられています。全固体電池への注目はますます高まっており、そこでは技術的な進歩が見られ、バッテリー化学やバッテリー設計の研究も続けられています。Lucid(ルーシッド)のバッテリー設計は、例えばゼネラル・モーターズとはかなり異なります。これは有望ですが、自動車メーカーにとっては非常に難しい問題でもあります。なぜなら、主要なパワートレインに対する最終的なソリューションが明確でない状態で、EVを展開しようとしているからです。そのため、自動車メーカーは現在の投資に加え、バッテリーの変更に応じて再投資が必要になるかもしれません。


マーク・ロビンソン氏について

マーク・ロビンソン氏は、自動車市場で30年以上の経験を持ち、ホワイトハウスではジョージ・H・W・ブッシュ大統領の下で経済諮問委員会の委員を務めた。直近では、ゼネラル・モーターズでエコノミスト兼アシスタント・ディレクター(2012〜2020年)を務め、戦略的問題に関する300以上のプロジェクトを指揮し、会社の価格設定の監督に携わった。それ以前は、ゼネラル・モーターズで戦略担当シニアマネージャー(2010〜2011年)、シニア・テクニカルフェロー(2010〜2012年)を務めた。現在は、MSR Strategy(2020年~)のオーナーとして、戦略とリスク管理に関するアドバイスを提供し、応用ビジネス戦略ニュースレター「The C-Suite」を発行している。

この記事は、2024年2月15日に開催されたGLGのテレカンファレンス「2024年の電気自動車価格設定」から一部抜粋したものです。テレカンファレンス全文のトランスクリプトは、GLGライブラリーでご購読いただけます。また、マーク・ロビンソン氏や、その他の業界との有識者インタビュー(個別のオンライン面談)も実施可能です。ご興味のある方は、GLGまでお気軽にお問い合わせください。


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